私気になって

私気になって
女達は言い付け通りに昼過ぎには兵営の一室に集まった

一人ずつ兵営の裏からウダルチの誘導で禁軍兵士の目に触れぬように集められた女達は大体の話はチュモから聞いていて理解をしていた為に大きな混乱もなく済んだ。
そうして各々の兵装、風除け等を配られ、暫くこの部屋でゆっくりするようにと言われている

口の軽いウダルチに案内された者は隣が鑽石水大護軍の部屋と聞いて気になってしょうがない

「ちょいと、あんた何をそんなにそわそわしてるんだい?」
樵の娘がそわそわしている女に言う

「あぁ、…さっき聞いたのよ。隣が大護軍の部屋だって…気にならない?聞いてから私気になってしょうがないのよね…」
そわそわしていた女は言う

「え?あの?ほんとに!」
茶色い髪の樵の女はあからさまに喜んだ顔をする

「大護軍って、まだお一人なんでしょ 布吉自由行?何でかしら?あんなに綺麗なお顔で、位も高く、お強いのに…」
もう一人別の真っ黒な髪の女が話し出す

「それは聞いた事があるよ!大護軍、思い人が居るって噂。しかもず~と長い間お一人だけをお待ちになってるって…」
別の女が答える

女が集まるり暇になると、こう言う噂話に花が咲く。
そしてどこかしらで聞いた噂話を持ち寄るので、たまに驚く位間違った噂も立つ

「あ、私が聞いたのはウダルチ隊の中に思い人が居るって聞いたけど?ウダルチ隊には女は居ないから、あたしはてっきり…」

また別の女がそう言うと、茶色い髪の樵の女は笑い飛ばす
「それは、無いよ。樵仲間でもそう言う趣味の奴居るけど、大護軍とは雰囲気がやっぱり違う。無い、無い。」
大きく手を振って笑う
 
そんな風に噂話を披露していると隣の部屋との境の扉が開き、ウダルチが入ってくる

「失礼する。噂話も結構だが鑽石能量水 騙局、余り大きな声でするような話ではないな。」
注意をしながら入ってきたその人は、此処に案内をした者達とはちょっと違うと女達は感じる

そうして、噂話に花の咲いていた部屋が静まり返るとその入ってきたウダルチはもう一度話し出す
「ウダルチ隊隊長チュンソクだ。これから開京までの道中、宜しく頼む。」

ウダルチテジャンチュンソクがそう言うとその場に居た女達は居住まいを正した。

「貴女方には我らの隊列に加わって頂きたい。」
チュンソクと言う人がそう言うと、一人の女が手を挙げる

手を挙げたのは黒い髪の女

「宜しいですか?隊長様」
テジャンはその黒髪の女に向かって了承の意味で頷く

「あの、何故、私達が集められたのでしょう?ウダルチは本来女は不必要な筈、お話を受けておいてあれですけど…おかしいような気がしてなりません…」

黒髪の女は言う
この黒髪の女は近くの村で武術を教える父を持ち、自分も教える資格を持つ女子。
学問の方もしっかり教え込まれているようで、中々に質の良い気品を醸し出している

そう言う女子であるからこそ、納得のいかない今回のウダルチの行動。
それに対しての質問だ。

その質問にテジャンが答えようとすると、その後ろの開いたままの扉から声がする

テジャンより若い声で、少し低い声。

「チュンソク、俺が話す。」
そう言って扉の奥から大柄な男性が入ってくるが、その男性を追ってもう一人滑り込んでくる

「いいえ、私が話すってば!」
そう言いながらけたたましく入ってきたのは女だった。

後ろから入ってきた女はこの数日、村の中を従者を連れて歩いていた女だ。

この見目の為、村では既に噂が出ている
「奥様」とも呼ばれていたこの女は何処かのお金持ちの妻でその宿を借り上げてこの場で誰かを待っているらしいと…

その誰かはどうやら、位が高い男のようだと言う噂。

その女を見て女達はざわつく…。
そんな女を連れて大護軍がやってきたと言う事は…
先程自分達がしていた噂を女達は頭の中で処理し、結論を出そうとする

けたたましい女の真ん前に大護軍が立ち、話し出す。

「某はチェ・ヨンと申す。明日より我がウダルチ隊の列に加わって頂ける事、本当に感謝する。本来、女人をウダルチ隊に入れる等有り得ぬ事ではあるが、此方にいる女人を安全に開京へお連れする為の事だ、余り疑問を持たずに理解して頂けると有り難い。」

チェ・ヨンと名乗った人はそう言った。

それを聞いて黒髪の女は言う
「それは、私達がその方の囮となれと言う事でしょうか?」
聡い女はそう聞いてくる

「そうだ。この方は王様の客人、どうしても安全にお連れせねばならん」
チェ・ヨンは黒髪の女の質問にそう答える
横で見ているチュンソクも眉間に皺を寄せる

すると、けたたましく話していた女がチェ・ヨン将軍になれなれしく話す

「だ~か~ら~、それじゃ駄目だって!ほら、この娘(こ)も、それに他の子も納得してないわ。何で私みたいな女の身代わりをする為に行かなくちゃいけないの?って思ってる。だから、そんな上から話すみたいに話しちゃ駄目だってば!」

大護軍の後ろに居たはずの女は勝手に大護軍の前に立ち、話し出そうとする

その様子を見て、眉間に皺の寄っていたウダルチテジャンの顔が途端に心配そうな顔になりおろおろしている
大護軍はその女の後ろで額のところに手を置いて目をきつく閉じて溜息を付いている

「今日は。本当の名前は・・・今は言えないので、仮の名で。私は「イ・セヨン」と言います。さっき皆さんが話していたこの人…大護軍の思い人と言うのは私の事。
そして、この人と生きる為に私は開京に戻りたいの。王様の客人って言うのは大げさね。私はこの人と夫婦になるために帰るだけ。ただ、普通には帰る事が出来そうもなくて、皆さんにお願いをしました。」

美しい顔を持つけたたましい人はそう、一息で言う
その後ろでテジャンチュンソクはがっくり肩を落とし、チェ・ヨンと言った武士は覚悟を決めたのか、その女が話す言葉をじっと聞いている

「私、この高麗の人間ではないの…だから、たまに変な事も口走るし、此処の習慣もしっかり覚えても居ない。でも、この人と一緒に歩いていく事にしたんです。どうか、私とこの人を助けると思って手伝って貰えないでしょうか。」

さっきまでけたたましく話していた印象からがらりと変わり、とても真剣な顔つきで話すその人は本当に綺麗な顔をしている

すると先程の黒髪の女はその女の話を聞いて益々眉間に皺を寄せて、また、手を挙げる

「ある程度のお話は分かりましたけど、正直、此方の女性を守る為に自分の身を犠牲にしたくはありません。だって、そちらもまだ隠しているお話があるようですし、私達が納得するようなお話をお願いしたいのですけど?」

黒髪の女は全く納得いかないんだろう、けたたましい女を睨むように見て大護軍を見る

すると今度は大護軍がそのけたたましい女の両肩をとても優しく両手で包み自分の横にずらす
「イムジャ、此処からは俺が話します。」
そう、その女にチェ・ヨンと言った人は優しげな瞳を見せ、此方に向く頃には武士の顔に戻っていた

「先程、この方が言ったが…この方は某の妻だ。しかし、此方の者では無い。勿論元の者でも他の国の者でもない。それゆえ、色んな所から狙われておる。都に行き着く前に攫われたり命を狙われたりするやもしれん。つい2日前にもこの方は狙われ、攫われかけている…。此処まで切羽詰っていて貴女方にお願いをしております。どうか、お助け下され…」

チェ・ヨンと言った男が私達に向かって頭を下げる
そこで私は初めて手を挙げる、一番聞きたい事を聞く為に。

「そちらの方、」
テジャンチュンソクが私を指差す

「間違っていたら御免なさい。其処にいらっしゃる女性は…「医仙様」ですか?」
私がその名を言うとウダルチテジャンと大護軍は物凄い形相で私を見たから続けて言う

「だって…、4年前噂になったでしょ?…大護軍がウダルチテジャンだった時に「医仙様」と恋仲になったって。皆、知らない?」
私が言うと他の子達がざわつき始める


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Posted by wushueri at 17:52│Comments(0)four
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